米株全体の分析

野中美里
アメリカの金利・株・為替について、3回に分けて解説していますが、
前回はアメリカの長期金利についてでした。
2回目の今回は、この長期金利の影響を大きく受けて動いてしまう
株式について」の解説後半「金融相場第三波がどうなるか?」です。
図・2月 米株ETF 階段上ドミノ

上から2つ目のピンク色がクリーンエネルギー(ICLN)。それからエンジ色がARKK、ものすごいパフォーマンスで有名だったんですが、ここにテスラとか入っているわけですね。これが一気に上がっていって超値がさになっていた。それから一般的なグロースということで青系統で薄い水色が NASDAQ100(ナスダックの上位100銘柄)。青が半導体、ほどほど上がってきていた。景気バリュー株の代表格として緑が高配当。それから薄緑で金融というのを入れていますけれども、これが見ての通り(2021年1月後半超値がさが大きく落ちてくる。これに押し切られる形で半導体やナスダックが落ちてくる。これはクリーンエネルギーだけじゃなく、例えばARKKの場合、優良な銘柄が色々入ってるわけですけれども、「なんか仮想通貨の件でテスラが売られている、下がってきた。長期金利が上がってきた。これグロースまずいんじゃない」と売られる時に、そこから資金が出ていくということは、他のグロースにも影響します。これが響いてきたということで時間差で押し倒される状況になっている。

景気バリューも一時売られかかったのですが、踏み止まって、むしろこういうグロースから逃げたお金が、やっぱり景気バリューなんだと入ってくる。ほとぼりが冷めかかっていたローテーションの模索が、ここで模索ではなくて大々的に起こった。

ここではっきりしていることは、アメリカ株全部が下がってるんじゃないと。オールド系の銘柄、つまり景気やバリュー、指数で言えばダウとかは新高値をどんどん更新しているのです。

一方で、超値がさだったグロース系・テーマ系のものが大きく反落している。だからアクティブな投資家ほど今回大きなダメージを被っていて、保守的にやってきた投資家からすると「何かそんな困ったことが起こっているの?」という感じにもなってるわけですよ。

この延長線上で考えると、「この後、金融緩和が続きますよ。景気はすごいことになりますよ。半年もお金を余らせたまま何もやらないんですか?」と言うと、伝統的な保守的な投資家は「買ってます。大丈夫です」。これだけ景気バリュー株が大丈夫だったら、「グロースも徐々に影響して大丈夫でしょ」って話になってくる。

それからこのARKKとかクリーンエネルギーとか、「こんなに高くなって、これでも飛び乗るのかな?」と思ってたものも一旦安くなっている。だから「買ってもいいかも」と物色が出てくる。

問題は、これだけ落ちてると、この上の部分(ARKKやクリーンエネルギーの2月頃の値がさ状態)は逃げ遅れた人たちが含み損抱えたポジションをシコらせているわけですよね。これは相場が戻ってきて、ほどほどまで来ると、やれやれと言って外す動きが出てくるので戻り売りが被さってくるリスクがあるんですね。

だから、景気バリューのようなものからじわっじわっときて、「大丈夫だ、これだったらグロース一般、何か手を出してもいいんじゃない」という上がり方が次に来る。そして、その上で全体が良いし、こういうテーマ性のあるものは、今回のサイクルだけでなく、クリーンエネルギーは「これからずっとでしょ」とか、あるいは、電気自動車(EV)も「これからずっとでしょ」、宇宙も「まさにこれから」。こういうものを拾ってくるという動きもこの後続くという意味で、いろんな銘柄は物色できるんだというのが私の認識です。

米株の今後は?

図・株式 金融相場後半戦へのイメージ

その相場についてちょっと整理をしておくと、青い線は景気サイクルですね。普通はこのグレーの線が株式相場で、景気悪い時にはどんどん落ちていくけれども、景気が悪い内に金融相場で上がります。

現状は金融相場の中にいる。「もうすでに金融相場から業績相場に移った」と言う方もいますけど、そうじゃなくて金融緩和が続いている間は金融相場なんです。

赤い線のように、コロナ禍でストンと落ちたものは超ド級の金融緩和でめちゃくちゃ上がりましたと。これはもう並大抵じゃない上がり方になってるんですね。これが今回の調整でちょっと下がった。ガス抜きされた分また買えるかも、いろんな銘柄選べるかもというところに来ているこの先も「景気回復すごいし、金融緩和続くし」というのでもう一段くるけれども(★より右側)、このもう一段くるっていうのは、既に後半戦なんだと。つまりサイクルで言うと、中腹まで来ていて、その上を取りに行っているんだということを考える必要があります。

だから、「時間分散でずっと買っていけばいいですねー」と悠長な事を考えるよりは、何かを取りたいと思ったら、早めにポジションを構えておいて、この中腹以上のところを取りに行く。なおかつ、長期金利過敏症みたいなものも折々にぶり返しますので、そういうことの高値波乱が何度かあるだろうと(★マーク右の何度かの上下)。

1月末〜2月下旬に起こったような上昇気流の中でのエアポケットというのが、おそらく今後も1〜2ヶ月に1回とかで起こりますので、そのぐらいのことを覚悟した上で入っていく。1年の終盤にもなって、「金融緩和は続くの?」ということを真剣に考えざるを得ない状況になってくると、それはそれで相場が反応してしまうだろうと思われます。もちろん、瓦解するということを政治的に政策当局が認められるという状況ではまだまだないんですね。2022年はアメリカで中間選挙があります。ということは、これはやっぱり支えにかかる。このまま政策をすべて引いてしまって株が台無しになっても仕方ないってことは絶対無いわけです。

でも、超ド級の金融相場の後の調整ということはそれなりのものがあることをある程度念頭に置いて、この金融相場の後半戦を取りに行くという心構えが必要になるだろうということです。

日本株は?

野中美里
一方、日本株も大きく下げましたが、日本株の今後についてはどうでしょうか?
図・日本株 対 米国株

金融相場の第一波のⅠという局面を見ていただくと、総じてアメリカ株が上回っていて、日本株が下回っている。ただ東証マザーズがひとり気を吐いてあげて上がっている。これは中小型の銘柄に個人マネーが殺到して、これは大変だと遅れてプロも参入してという、ちょっと相場としては祭り上げられちゃったところがあるんですね。

日本株はずっと低迷しているんですけども、この間、日本銀行が買い支えているわけです。ETFで買っている。介入して支えて、パフォーマンス上は見劣りしている事でもあるのです。

ところがアメリカ株がこののところでもたついて、これがアメリカ大統領選挙の後、ワクチンの良いニュースが続いた後に、「経済正常化」「世界も正常化」と言った時に「世界で割安に置いていかれていたのはどこ?」ということで、日本株の見直し買いも入ってきたので、ここで、この赤(日経225)とエンジ(TOPIX)がアメリカのS&P500などを凌駕して上がっていくということで、アウトパフォームするという状況があったと。

これで「外国人が日本株を見直している」と報道されましたが、そもそも割安に置かれていて、持っていない、十分に買っていないものが上がってきた時には、持たざる恐怖に駆られて買うものなんです。だからそういう形で買ってきた。

でも私がこの間申し上げてきたのは、選択肢としてアメリカ株ばっかりじゃなくてそれ以外のものに分散する。アメリカ株は好調だけれどそれなりに波が大きくなる。その意味では他の国の優良な銘柄を集めたようなETF等も分散対象としてはいいんだと。日本もそこに入りますよという意味では言ってきたんです。

でもその日本で日本銀行が金融政策の見直しをして、今までは日経225でもETFを買っていたしTOPIXでも買っていた。でもこれからTOPIXにしますと。日経225って銘柄が少なくて、あまり買っていると特定銘柄にインパクトを与えすぎちゃうんですね。度が過ぎてるって言うので、これからは広く浅くでTOPIXにしますと言ったわけですよ。こうなってくると日本銀行の支え方が今までと違ってくるので、これでも揺らぎますよね。何よりも私が嫌なのはリズムが取れないんです。

つまり、日本銀行が恣意的に何か変えましたと言って揺り動かされたり、下がってきた時にはそれでもやっぱり日本銀行が買ってるから支えてますというと、アメリカ株のようにリスクをとっている人たちが熱く売り買いで対峙してて、そのせめぎ合いで、本当に神輿を担ぐようなリズム感というものが出てきて、「今いいよね」「なんかすごくちょっと熱くなりすぎてるし、こっちに偏りすぎてるから揺り戻すよね」というリズムがとれること自体が私にとっては重要なので、その点では日本株を分散対象として、選択肢として、2021年悪くはないと思うけれど、あまり私は好きじゃないというのが正直なところですね。

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