円高は日本の投資家にとっての最悪期?

野中美里
この3週間で10円近く円高が進んでいて、この為替の動きを田中泰輔さんがどう見ているのか伺っていきたいと思います。日本株が売られ、日本の対応に様々な批判があるなかでも円は上がるんですね?

「リスクオフで円高」という宿命が日本にはあるんですね。経済環境あるいは市場の情勢が悪くなると円高になる。日本株が売られている、これって日本売りじゃないの? という時に円高になるという宿命がそもそもあるということは、肝に銘じておく必要があります。

株が下がって円高になっていれば、株が下がった分だけ当然投資はやられます。それから円高になると外貨資産、リスクオフということは外貨資産も値下がりしているものが多いんですが、これが円高分だけ外貨が値下がりしているので、為替差損もその上に乗っかってくる。ですから「リスクオフになると、ほとんどの資産がマイナスになる」というのは日本の投資家の宿命でもあるんです。

本来、安全資産と言われる国債等を買っておくと値上がりするのですが、金利がほとんどゼロで、値上がりする余地がない。そうするとリスク資産として買っている米国株であったり、新興国株・新興国資産などが値下がりするばかりで、もう本当に「全か無か」みたいな事に陥りがちなんですね。

この図は日米株価とドル円の推移を並べたものですが、赤い線がドル円。105円から110円の間をいったりきたりして非常に値幅が狭い、動かないということだったんですが、その中でも2019年の夏頃にトランプ政権が米中摩擦を煽ったときには、やっぱり下がって105円に近づいた。

その後利下げが進んで、利下げを好感して米株が上がってくる。それからトランプ政権が、大統領選挙がいよいよ始まるという時に米中摩擦をいったん棚上げにするという行動に出たので、またそれで株が上がるっていうと、ドル円が105円-110円のレンジの上の方にきたんですね。「リスクオンで円安」という状況なんです。

ただ年が明けて2020年に入ってコロナ問題が出てきた時に、中国見通しが悪化する、日本にも波及するかもしれないといった時に日本株が落ちてくるんです。

アメリカ株は、距離的に遠かったしアメリカ経済はしっかりだし大丈夫という楽観が、こういう感染症の問題で相場が下がった時は買い場だと思う人たちを呼び込んだので、むしろ一段高になる。そうすると日本株は下がってるけどアメリカ株が上がっているという状況になるわけです。

日本からするとリスクオフ、感染症が大変な事になりそうっていう状況の中で、実はドル円相場が2月に110円のレンジを超えて112円までポンと上がったんです。これを見て日本の専門家の中から「リスクオフで円高は終わった」という議論をする人たちが出てきたんですね。

基本的にリスクオフで円高という一番深刻なメカニズムって何も変わってないんですよ。そこで何度も機会を見ては強調したんですが、結局専門家がリスクオフで円高ということに対しての警戒心を緩めてしまうと、そのアドバイスを受けている人たちも、逃げ場なんだという認識にはならないですよね。

結果的に本当にリスクオフで円高になった時に日本株の下落がきついし、円高になって外貨資産もやられてるしという事態に巻き込まれてしまうということなんです。

野中美里
リスクオフで円高は終わっていないのですね?

歴史的に、かつて日本が苦境に陥った時には円高になっているということなんですけども、典型的に一番ひどかったのはリーマンショックの後などですね。アメリカが金融危機に陥った中でアメリカ株も下がっていく、日本経済も巻き込まれるという時に、日本は「今回、金融問題での傷は浅いから大丈夫だ」っていう議論があった。

ところが、実際にふたを開けてみると、アメリカ株が立ち直っても日本株はずっと売られ続けている。背景は何かというと、アメリカ経済を支えるための極端な金融緩和のあおりでドル安円高になっていること。円高になっている分だけ日本株が売られている。そして日本株が売られると、リスクオフでの円高も煽られていくという悪循環から抜けられなくなってしまったんですね。ですから、アメリカ発の金融危機だったと言っても、日本が円高の煽りでずっと苦しむという時代になったんですね。

だから日本の場合には 、アメリカもいい、世界もいい、日本もいいっていう追い風の時には「株高と円安」になる。円安分、外貨資産も値上がりしているということで良い時は全ていい。でもリスクオフになると全て台無しということの繰り返しなので、リスクオフでの引き際の方が、いつ買うかよりはるかに重要な問題なんです。逃げ方の方が重要なんだと。

日本からの投資はヒット&アウェイ戦略が重要!

過去の歴史においては、何かにつけて金融業者は自分たちのビジネスにとってもお客さんにとってもいい「株高で円安」と言いたい。逆風にさらされた時には、私たちは株安円高が続くと思いません、というようなことを言い続けるので、日本の投資家は売り時を失って、ポジションを塩漬けにして身動きがとれなくなるということが多かった。

私がずっと主張しているのは「リスクオフで円高という宿命があるので、ヒット&アウェイで追い風が吹いてきたら買う、手厚く買う。でも追い風が止まってきたら逆風が吹く前にとにかく手を引いてポジションを軽くすることが重要なんだ」ということです。しかし、必ずしも日本の投資家は、売ってポジションを軽くしているというばっかりではないので、かなり厳しいことになってるんじゃないかということを心配しているんです。

そもそも何故リスクオフで円高なのか、かいつまんでポイントを申し上げると、・・・

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